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自分の手でハイビジョンを撮影したい、という夢を、ずっと昔からあるDVテープを流用することによって、思わぬ早さで家庭の中にもたらしてくれたHDV規格。
登場した当時は、今更なぜテープなのかという疑問を持たれた方もいらっしゃった事でしょうが、私個人的には、正解だったと思います。
当時はメモリカードが高価でしたし、そもそもSDカードの上限は2GBまでという時代でした。
それに対して、1時間のDVテープなら、MPEG2 TS方式にしても11GB強相当の大容量を確保出来ていましたし、撮影した後はそのまま保存しておけるという、アーカイブの利点もありました。
1時間のDVテープに、ちゃんと表記通りの1時間録画出来るという、非常に分かりやすいという点も見逃せません。
また、テープという媒体に不安を感じていたとしても、映像そのものはMPEG2 TS方式というデジタル記録されていますから、撮影そのものはひとまずテープで残す事にして、その後でパソコンなどの機材を使ってファイル変換してしまえば大丈夫。変換という手間は必要ですが、テープの再生時間とほぼ等しいため、撮影した映像を鑑賞するつもりでやってしまえるというレベルです。
HDVの欠点として指摘される事の多い、解像度が1920×1080ドットではなくて、少し小さい1440×1080ドットである、という点も、良し悪しだと思います。
1440×1080ドットは、地デジのハイビジョン放送と同じであり、ドット数を減らすことによって、ビットレートが低くても画質を良好に保つ選択肢としてアリだったのではないかと思っています。
とはいうものの、HDVには、やはり欠点も見え隠れしていました。
家庭用のカメラは、全てがそうなのかどうかは分かりませんが、テープの走行音がマイクから録音されてしまいがち。
たとえば、静かな森の中のシーンなんかで、ジィィィーッというテープ走行音が延々と聞こえて来た時はショックでした。
テープならではの弱みとしては、クロッグと呼ばれる一時停止する現象も厳しいものがありました。
これは、磁気テープの表面が剥離するなど何か障害があった時に、映像が乱れるのを防ぐために映像が一瞬停止してしまうという仕様なのですが、ネットを見ると、高性能タイプのHDVカメラかつ高級DVテープを使用してもなお発生する場合もあるようです。
家庭用カメラの新製品においては、少なくともテープ=HDV規格の時代は終わり、ファイルの形でハイビジョンを扱うAVCHD規格に主流が移ってしまいました。
私も、もしも次にハイビジョンカメラを買う機会に恵まれたなら、HDVではなくて、AVCHDのカメラを選択すると思います。
ただ、HDVカメラは、今後も使っていきたいし、ハイビジョンで日々の様子を記録出来る「夢」に終わりは無いですね。