日本の製図用シャープペンシルというと、個人的には「ぺんてる社グラフ・シリーズ」が印象深いのですが、どっこい、パイロット社の「S3(エススリー)」もかなりの実力と人気を誇っているようです。
ネットでの評価も高く、友達にも猛プッシュされたんで、実際に店頭にて手に取ってみたら心の琴線に触れるものがありました。
購入したのは一番気に入った「パイロットS3(エススリー)透明ブラック(0.5mm)」です。
この透明ブラック軸ですが、見事な曲線を描くフォルムとあいまってかなり美術性も高いように感じて、失礼ながら思わぬ美しさに目を丸くしてしまいました。
クリップやペン尻のノックパーツに至るまで、デザインが念入りに考えられている印象。
S3(エススリー)は、製造技術的に言ったらば、そりゃもちろん大量生産用の簡易なものなんでしょうけれど、そういう壁を突き抜けて、設計・製造現場にこだまする職人魂みたいなものが伝わってくるように感じます。
ペン先は、軸の一部まで含んだ、ノーズコーンからリード・スリーブまでオール金属の一体化設計で、非常に高い剛性が確保されています。
このあたりは、大強豪のドイツはステッドラー社の925-65シリーズともガップリ組み合えるような強さを感じますね。
樹脂軸グリップは、素材そのものが微弱な粘りをもっている上に、リング状スリットがなかなかの滑り止め効果を生んでくれています。
このS3(エススリー)ですが、キャップの加工精度や、ブラックカラーで色を付けた樹脂軸、クリップの金属加工技術等、実は超高度な製造技術の結晶体だったりします。
このレベルを普通に生み出せる方々がいるんだなぁと思うと、何か目頭が熱くなりますね。
よく漠然とモノ作りという言葉を聞きますけど、ペンはその誇りをガツーンと感じさせてくれる身近な存在なのであります。
この透明ブラック軸ですが、内部パーツが清いというか、白い軸一本というシンプル構成。
それが奏功して、調和の美を醸し出していて、前述した美術性の高さを感じるに至っていると思います。
透明軸ってのはやっぱり諸刃の剣で、内部に気を回さなかったら、汚いとか安っぽいとかの逆方向の地獄行きだったりするのではないかと思います。
実際に筆記してみると、製図用シャープペンシルとしては非常に珍しい女性的な繊細フォルムが、しっかりと使いやすさにも直結していて非常に感心させられます。
素材や製造技術そのものは一見してシンプルですが、あらゆる加工精度が抜かりなく巧緻で、もちろん筆記の安定性もバッチリ。
製図用シャープペンシルって、筆記性能に関してはどれもこれもトップクラスの勇士揃いなのですが、今回、さらにS3(エススリー)という素晴らしいペンを知ることが出来て感動です。
■追記
いよいよ仕事に投入してみましたが、同時に実践投入した、ぺんてるグラフ1000 FOR PRO(フォープロ)(0.7mm)の「神話クラス」とも言える極上書き味 の前にも、決して霞まないほどのパワーがありました。
仕事で開発中のプログラムの挙動を追いかけながら、バンバンと筆記しましたが、ペンのフォルムがとにかく熟考されていて疲れにくくてビックリ。
ヘタすれば安く見えるであろう透明樹脂ボディですが、S3(エススリー)の透明ブラックは違います。
職場における"明るく静謐な典型的なオフィス空間下"でジックリ見ても、非常に深みのある艶を発していて美しいの一言。
ステッドラー925-65-05や、ヒーロー級の魅力を持つロットリング300とも比肩する、廉価をものともしない大快筆であると断言出来ます。
グラフ1000 フォープロで0.7mmの威力を再認識したので、エススリーの0.7mmもあれば欲しいなぁ・・・