今回の記事では、米国CROSS社の本革ボールペン「オートクロスペン・ブラウン」について書かせて頂きたいと思います。
化粧箱を覆う紙製シールドには、中央部に小窓があいていて、ちゃんと「CROSS」のロゴが見えるようになっています。
紙製シールドを外すと、シルバーに輝く大柄で貫禄あるCROSSの化粧箱が姿を現します。
個人的にはまだCROSSのペンには馴染みが薄く、CROSSカレイ・ピュアクロームのブラウンの化粧箱が印象に残っているため、あっこういう色もあるのかという気持ちです。
化粧箱を開けると、CROSS・クロスオートペンが姿を現しますが、まるでフットボール型とでも言うべきか、驚くほど斬新なフォルムにピタッと手を止めてしまいそうになります。
化粧箱の裏蓋にもかなり凝った装飾が施されており、ここまで来ると、「さすがはメジャーな贈答用高級筆記具としても名を馳せる、あのクロス社の製品だな」と嘆息してしまいますね。
オートクロスペンは、その斬新なフォルムはもちろんのこと、手帳などの「オートクロス・レザーアクセサリー・シリーズ」とも共通の本革が張られているのも大きな特長です。
本革は「フルグレイン・レザー」という種類のものが使われていまして、自然の皮の状態をそのまま活かした美しさと、素朴さ故に保たれた強度が持ち味です。
ブラウンに着色されたフルグレイン・レザーは、これぞ革製品だ!と感じられる自然な味わいを堪能出来ますね。
革はペン軸全周巻きではなく、背面はぐるりと巻いて表面の[CROSS]ピラーで止める手法をとっています。
全周巻きにチャレンジするとなると、合わせ目の美しい処理にはどうしても「日本のプラチナ万年筆社のような超絶技巧的な職人技」が必要になるため、なるほど、デザイン上の理由を抜きにしても、米国流のうまい設計と言えるのかも知れませんね。
このオートクロスペンは、全体からほんとうに「ただ者では無い」感が発散されていて、もしもペン先が出ていなければ、パッと差し出されて「これは何か」と問われたら、疑いなくボールペンと即答するのに迷ってしまうスタイリングではないかと思います。
オートクロスペンのリフィルは#8518-1となっていて、舶来筆記具のボールペンとしては細身に感じます。
日本のボールペンで言えば0.7mm芯という感触。
ペン尻を回転させて収納するのですが、ペン尻の回転は滑らかで適度な重みを有する上質なタッチです。
大胆な山型フォルムを描く天冠部分には、巧緻な金属彫刻が全面に施されていて、デザイン、フルグレインレザー素材と共に、三位一体でオートクロスペンの存在感を特上に高めています。
オートクロスペンは、いわゆる"ミニサイズ"ペンとして誕生しているのですが、斬新なだけではない握りを熟考したフットボールフォルムと、しっとりとしたフルグレインレザーの相乗効果がかなりのもので、握りやすさは驚くほど良好です。
ただ、ペン本体の握りやすさは満点ですが、細身のリフィル(0.7mm相当?)は、ちょっと書き味が硬いかな。
日本のゼブラ社やぺんてる社などの完成された0.7mm油性リフィルと比べると、インクの乗りが弱腰で、ペン先の抵抗感の強さもいまひとつ不満が残ります。
ただし、あくまでも標準セットされたリフィルの話なので、単なる個体差かも知れません。
リフィルは交換可能なので、気に入らなければ別のリフィルを試すという道もあり、さほど気に病む必要も無いと思われます。
ちなみに、ミニサイズと言いますが、手帳用のような極端なものではなく、室内を彩るインテリア要素を視野にいれたミニサイズという感じで、飾ってOK、使ってOKの素敵なボールペン。
ペンを求める旅にあっては、心安らぐ豊かなオアシスとも言うべき一筆でしょう。