2009年3月1日日曜日

無謀な比較?HDR-FX1000対HDR-XR500V

いよいよ、ハンディカム最高峰のHDR-FX1000と、HDR-XR500Vの画質を自宅で比較してみました。
個人的には、HDR-XR500Vの最終確認となると思います。

まず、結論から先に言ってしまうと、HDR-XR500Vは、やっぱり素晴らしいハイビジョンカメラである事が、あらためて確認出来ました

■もちろんカメラの性格は全然違います■

HDR-FX1000は、映像のパラメータを自分で調整して画を作ったり出来ますし、そもそもマニュアルの操作性が省略されたHDR-XR500Vとは比較の対象にするのはおかしいと言えます。
しかし、ハンディカム最高峰の画質と比べてHDR-XR500Vがどこまで迫れるのか? というのは是非ともやってみたい比較でした。

■影の部分の表現力が優れたHDR-FX1000■

HDR-FX1000とHDR-XR500Vの映像を比較すると、ぱっと見、FX1000の映像の方が全体的に白っぽく感じます。これは、影になった部分がすぐに黒く落ち込まずに階調がかなり細かく出ているためではないかと思います。
HDR-XR500Vは、影の部分の階調はFX1000ほど無いので、コントラストが高くて引き締まって見えますが、厳しく言えばやや省略された映像とも言えます。しかし、それは過酷な比較であって、実際は、明るい部分が白く飛んでしまうまでの粘りや、影の落ち込み方の緩やかさは、文句のつけようがないと思います。

■もはや、3センサーでなくても大丈夫かな■

HDR-XR500Vの1/2.88インチ裏面照射センサーは、クラスを超えた高感度センサーですが、それだけで画質が決定されているわけではなくて、ソニーの画像処理チップ「BIONZ(ビオンズ)」があってこその画質です。
このBIONZの処理が優秀なのか、色がとても正確で自然に出てくるというのが驚きです。
くすんだ緑、明るくパンチの効いたオレンジ、原色系のグリーン、黒系統の襟巻きなどなど、再現性が難しいんじゃないかと思われる服の色も、勝手なカラー・アレンジを加える事なく、淡々と正確に表現してくれます。
センサー数が何個あろうとも、最終的には映像処理チップの能力がモノを言うわけで、もはや1センサーで良い時代になったんだなとあらためて感じました。1センサーであれば、センサーサイズ自体を大きくして背景のぼけ味を良くする方向にも進めますしね。

■やはりブレない映像は画質うんぬんを超える■

HDR-FX1000は、やはりブレには強いです。
フラフラしがちな小型ビデオとは次元の違う、大きくて重いがゆえの安定した本体は、手ぶれ補正レンズの効果をより大きく打ち出してくれている感じです。
20倍ズームにしても、122万画素のエクストラファイン・ファインダーにしっかり接眼して、両手で本体をしっかり支えれば、完全には止まらないまでもブレは緩やかです。
しかし、HDR-XR500Vは、不安定極まりない小型ボディでありながら、もはや必殺の武器とも言える新型手ぶれ補正装置によって、HDR-FX1000に匹敵する安定度を得ています。
日常のかけがえのない風景を手持ち撮影で記録する時は、もはや電子的な画質うんぬんを言っている場合では無いのかなというレベルです。

■静止画の利用は、HDR-XR500Vのもの■

ハイビジョン映像の魅力は、高解像度の静止画を同時に利用できるという点にもあると思います。
この点では、HDR-FX1000は、ちょっと不利です。
ダイナミックレンジの広い映像を切り出せる魅力はありますが、解像度的にはフルハイビジョンには到達しておらず、印刷となると厳しいものがあります。
HDR-XR500Vは、フルハイビジョンでの切り出しはもちろん、撮影時にフォトボタンを押すだけで、830万画素の静止画同時記録出来ます。
ここで重要なのは、単純に画素数が多いだけの画像ではなくて、画質も確保されているという点です。
普通にコンパクト・デジタルカメラの役割を任せて大丈夫だと言えます。
裏面照射センサーならではの低ノイズと、強力無比な手ぶれ補正装置、BIONZによる画像処理のうまさも加わって、静止画はオマケではなくて、積極的に利用出来るレベルにあると言えます。

■メリハリの利いた高解像度画質■

HDR-FX1000は、自分でパラメータを色々といじって好みの画が得られるという能力があります。
だから、絶対にこのカメラでなければならないという強みがあります。
それはそれとして、HDR-XR500Vは、調整の幅が少ないとは言うものの、ベースとなる画質がフルハイビジョンらしい高い解像力と、小型センサーでありながらも、決して安っぽくならないダイナミックレンジの確保、正確な色の再現力を備え、十分に素晴らしいと思います。

多少、自然志向が強くて、地味で面白みの少ない画像かも知れませんが、何年か後に撮影した映像を見ても好ましく感じるチューニングであろうなと思います。

■惜しむらくは画質ではなくて、省略された操作性■

蒸し返しになるかも知れませんが、HDR-XR500Vで惜しむらくは、この高性能に比較してあまりにも操作性が省略され過ぎている点です。
HDR-FX1000の優れた操作性を体験した後だと、そこだけが残念です。
ソニーの想定するファミリー層って、そんなにシンプルにしないと分からない人たちなんですかね。
たとえば、EOS KISS X2などの一眼レフは、手動でのコントロールが隠さずに提供され、その上でフルオートで楽しく撮影出来るわけで、それでいいじゃないかと思わずにはいられません。

最後は、ちょっと文句になってしまいましたが、HDR-XR500Vの出来の良さゆえに勿体ないなぁという気持ちで、このカメラはやはり近年まれにみる傑作機だと思います。
個人的には、HDR-XR500VとHDR-XR520Vは、ビデオカメラの歴史に残る名機になるだろうという感触はありました。

これで、購入前の確認テストは全部終わりにしたいと思います。