和の心を持った日本メーカーにしか作れない素晴らしい和柄ペン。
その中でも個人的に特に気に入っているのがセーラー万年筆社が描き出す和柄です。
今回の記事では、その中でもさらに気に留めていた「優美蒔絵(ゆうびまきえ)・枝垂桜(しだれさくら)」について書かせて頂きたいと思います。
優美蒔絵シリーズは、樹脂製の和風ペンケースに入って来るはずなんですが、この枝垂桜は大きくてズシッとする化粧箱に入ってきました。
この化粧箱、クッション入りのビニール張りで、とにかく大変に見栄えがします。
ケースを開くと、そこには「優美蒔絵・枝垂桜」が文字通り優美に横臥しています。
それにつけても、このケース、内装にも気を遣っていてるところから考えると、もしかしたら、よりハイランクカテゴリーの「プロフェッショナルギア」や「プロフィット」用という気がしますね。
このペンの柄はまさに見事としか言いようがなく、和柄のペンが欲しいって思ったら真っ先に候補に挙げる価値ある逸品。
私がなぜセーラー万年筆社の和柄が好きかと言えば、蒔絵の伝統的な美を重んじながらも、ジェネレーションを限定しない自由で軽やかな発想があり、若々しさに輝いているからです。
この枝垂桜も素晴らしく、もはや観賞用として部屋に飾っておいても良いほどの出来栄えであります。
蒔絵とは、職人さんが手作業で絵の上に金粉を乗せていくさまを"蒔く(まく)"と表現し、この技法によって生み出される絵であります。
優美蒔絵シリーズは、大勢の人に蒔絵の世界を知ってもらいたいという願いから、ベースとなる絵は手描きではなく印刷とする事によって工数を抑えていますが、その絵の上には、ちゃんと高度な技術と経験を持った職人さんが手作業で金粉を蒔いています。
正直、蒔絵の耐久力が心配でペンを握る時に一瞬の躊躇が出るのですが、これはあくまで人情としての話であり、実際の耐久力は「製品」としてメーカーがしっかり考えているはずだから心配無いと思います。
多機能ペンとしての性能ですが、メカニズム的にはごく平凡なものだと言えます。
機能切り替えのたびに、ガッチャン、ガッチャンと作動音が響くため、図書館等の静かな場所では少し気になってしまうかも知れませんね。
ただし、言うまでも無い事かも知れませんが、筆記そのものには何ら問題はありません。
ここで、ゼブラ社のシャーボXのような超高性能メカニズムを投入してしまうと、価格をずっと押し上げてしまうため、大勢に蒔絵を楽しんでもらいたいという願い(コンセプト)からすると、この設計判断はバランスがとれていると思われます。
それにしてもこの柄は素敵ですね。
枝垂桜の間を、青い蝶が優美に舞っているという発想は、心が揺さぶられるものがあります。
セーラー万年筆社には、これからもどうか和柄の世界を広げ続け、その良さを沢山教えて欲しいと切に願うものであります。
実際に筆記してみると、多機能ペンとしてのメカニズムは確かに平凡ですけれども、セーラー万年筆社の油性リフィル(型番18-0103)そのものは、芯先にインク吹き溜まりも出来にくくて安定した書き味があります。
それと、アルミニウム製のボディは、少し太めのボディという見た目よりも軽い22グラムに抑えられています。
仮に長時間の筆記に疲れても、見事な蒔絵に目をやればたちまちフワッと癒される感じも素晴らしい。